タチバナ セツ
  橘 セツ
   所属   国際コミュニケーション学部 観光学科
   職種   教授
発表年月日 2023/11/26
発表テーマ 20世紀初期英国の女子園芸学校を結節点とした「ズボンなんかをはいた,いまどきの女庭師」と「ケレスの娘たち」の理念をめぐる文化地理学
会議名 人文地理学会大会
主催者 人文地理学会
学会区分 全国学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 単独
国名 日本
開催地名 法政大学 市ヶ谷キャンパス 東京
開催期間 2023/11/25~2023/11/27
概要 本発表では, 20世紀初期の英国の女子園芸学校を結節点として誕生した女性の新しい専門職としての女性庭師に対するパラドキシカルな理念と社会的な要請について検討した。ひとつの方向性は,「農業のより軽い部門」であろうとも園芸分野の肉体労働を女性がすることで生じる新しい女性としての身体的ふるまいであった。農業・園芸訓練学校の修了生はどのような場所で働いていて, 社会でどのように受け止められてきたのであろうか。参考になるのは,1920年に発表されたアガサ・クリスティ(山田蘭訳)の推理小説『スタイルズ荘の怪事件』に描かれている「ズボンなんかをはいた,いまどきの女庭師 」という言葉である。具体的に, 女性庭師の労働するときの服装と身体的ふるまいは, 20世紀の時代によって大きく変化する。彼女たちが目指すべきもうひとつの方向性は,ローマ神話に登場する豊穣を司る農業神である「ケレスの娘たち」の社会的使命である。園芸の理論と実践を学ぶ女子学生は, 園芸に関する労働, 食, 家庭生活 , 衛生に関わる知識とケアに関して効果的で科学的な実践を通して女性を幸せに導くパイオニアを目指すという思想が, レイディ・ウォリック・カレッジの学校機関誌『スタッドリー・カレッジ農業ジャーナル』の第1巻・第1号(1905年1月)の冒頭に表明されている。先に述べた「農業のより軽い部門」とは, 家庭に関わる分野をも示唆する。ここにはキャリアと家庭の両面の価値を同時に達成させるような園芸教育をすることが目論まれている。一方, 現在の社会科学の研究潮流からは, ケアの倫理と実践については, 人と人のつながりを形成していく力の一つとして社会関係資本の研究の文脈からも見直されている。本発表では,20世紀初期の英国の私立女子園芸学校レイディ・ウォリック・カレッジ・スタッドリー校に関わる教職員・学生・卒業生の活躍のネットワークと彼女たちの思考について, 当時, 英国において刊行されていた園芸専門雑誌や女子園芸学校誌から検討し, 紹介した。