イブキ ユイ   Yui Ibuki
  伊吹 唯
   所属   熊本保健科学大学  保健科学部 共通教育センター
   熊本保健科学大学  保健科学部 医学検査学科
   職位   講師
発表年月日 2023/10/08
発表テーマ エスニック帰還移民としての中国帰国者 ―日系ブラジル人・アウスジードラーとの比較から
会議名 日本社会学会第96回大会
学会区分 全国学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 単独
概要 本報告は,中国帰国者をエスニック帰還移民研究のなかに位置付け,そのことの持つ意味を再検討するものである.

欧米において,エスニック帰還移民研究は,多文化主義やトランスナショナリズム論の登場,ディアスポラ研究や引揚研究の興隆の流れのなかで,展開されてきた(例:大川2016).日系のエスニック帰還移民では,日系ブラジル人や日系ペルー人がその研究潮流のなかで論じられてきた(Tsuda ed. 2009など) .

中国帰国者もまた,エスニック帰還移民であることが指摘できる.中国帰国者は,本テーマセッションの要旨でも指摘されているように,戦後日本社会への未帰還者の遅れた「引揚」という側面とグローバル化のなかでの「移民」としての側面を有しており,エスニック帰還移民研究にも多くの貢献をもたらすと考えられる.したがって,中国帰国者について他のエスニック帰還移民の事例を参照しながら,共通点や相違点を分析し,「エスニック帰還移民としての中国帰国者」の位置づけを明らかにしようとする試みは,中国帰国者研究の新たな局面を切り開く可能性をもつ.

 そこで,本報告では,エスニック帰還移民のなかでも2つのグループを参照しながら中国帰国者の位置づけを検討する.1つ目は,中国帰国者と同様,日系のエスニック帰還移民である,日系ブラジル人を取りあげる.2つ目はドイツのアウスジードラーである.ドイツは日本と同様に敗戦国であり,戦後,各地に離散していたドイツ人の「追放」が行われたが,そのことは日本の「引揚」と比較して論じられることも少なくない(蘭・川喜田・松浦編2019など).以上から,これら2つを本報告において参照する事例として適切と考えた.また,Brubaker (2001)は,エスニック帰還移民には,「公式のエスニシティ」と「非公式のエスニシティ」があると指摘する.そこで本報告では,「公式のエスニシティ」とかかわるエスニック帰還移民の受け入れ政策と,「非公式のエスニシティ」とかかわるエスニック帰還移民の地域社会における受け入れの側面に焦点を当て,検討する.